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「あいつ、イケメンだな」
「ういういしいったらねぇな。白シャツが眩しいぜ。やべ、涎でそう」
「こうやってみると、ネクタイも似たり寄ったりだな。ブラウン系かブルー系のレジメンタルか」
「そう。個性のねぇ時代というか、皆ネットで調べて、そのまま真似しやがるから、同じになっちまうんだよ。という事は、学生服と一緒で、イケメンかそうじゃないかがハッキリしちしまう、ってことでもあるよな」
「なるほど。服で印象を変えられないから、顔の良し悪しがハッキリするってことか」
「あいつ、チョーカッコいい。ピンクのネクタイってのもいいな」
「あいつに決めた。お前はここに居ろ。絶対について来るなよ」
司は、その男がコーヒーを1人で飲んでいる丸いテーブルの方へ移動した。
飾り気の無いレギュラーカラーの白シャツのボタンを全部キッチリと留め、淡いピンクのネクタイをシッカリと結んだ、ジャニーズ系のイケメンである。
10分後、司が戻ってきた。
「どうだった?断られたのか?」
「ううん。替えのワイシャツを買ってくれだと。一緒に行くことになった」
「俺も一緒に行っていいか?」
「今回だけな」
***
その就活生は新橋駅前の雑居ビルに入った紳士服店で2980円のワイシャツを選んだ。司がレジで支払った。そしてその就活生は、その紳士服店の試着室でワイシャツを着替えた後、最高の笑顔で店から出てきた。
「今回はありがとうございました」
青年は言いながら、自分が着ていたワイシャツが入った紙袋を司に手渡す。司は中身を確認して、青年と握手した。
「よかったろ。結局予定通り3000円弱で交渉成立だぜ」
「何と言って脱がせたんだ?」
「それは言えねぇな」
「わかった。それよか、匂いかがさせてくれよ。二十歳そこそこのイケメンの匂いってどんなんだ?」
「明日店でな。今晩は俺が処理につかう」
「って、汚すんじゃねぇよ」
***
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