第3章

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「奈美恵と食べてたからうまかったんだ。あの頃も。そして、今も」 奈美恵が瞳を潤ませながら、何度も頷いてくれている。 どうか、どうか同じ気持ちであってほしい。 「奈美恵とまたこうやって食べたい」 「それはどういう意味?」 彼女の鼻の頭が赤くなっている。口元を両手で押さえている。 どうか、どうか同じ気持ちであってくれ。 「ずっとこの先も二人でここの飯を食べたい」 「それだけ?このお店のご飯だけ?」 少しだけ口を尖らせているけれど、目は笑っている。 その表情に、俺たちが同じ気持ちであることを確信する。 「奈美恵とずっとこの先も一緒にご飯が食べたい」 「それってどういう意味?」 ニヤリとする奈美恵。 「結婚しようっ」 奈美恵は一瞬目を大きく見開いた。 そして、大粒の涙をポロポロと流しながら、「バカやね。急すぎやね。克己くんはホント気が早いったい。でも、嬉しい。ずっと待っとったんよ」と笑ってくれた。 うん、奈美恵と一緒に食べるからこそうまかったんだ。 あの頃も今も。 そして、これから先もずっと。きっと。 完
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