桜並木の奥に

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だが僕の精神力では、そういった機転を効かせる事は出来ないらしい。 『店』に欲望に呑まれる。 繁華街を、快楽を求めて彷徨う。 「嗚呼」 この金を注ぎ込める場所を探す。 「嗚呼」 人一人を売り払った事など忘れて、いや、忘れるためにただ歩く。 「嗚呼」 すると途端に、ジャージのポケットが小刻みに震えだした。 例の如く携帯を取り出し画面を見ると、映るのはいつもの知らない番号。 いつも通りに着信を拒もうと考えた。 しかし、「今は出た方がいい」と何かに言われたような気がした。 応答のボタンを押して、機体を耳に当てる。 「、、、」 ひどく慌てた様な声だった。 耳に流れてくる声は、どこか責め立てる様で、心配している様で、 「、、、、、、」 電話から聞こえる声は、 彼女の、、、、 彼女の、、、 彼女の母親の声だった。 、、、娘を案じたその声は僕を現実へと引き戻し、自分の犯した罪の重さを再び叩きつけた。 今日応答がなければ、東京まで訪ねに行くつもりだったと彼女の母親は言っていた。 手が震える。 自分は一体何をして何処にいるのだろうか。 「ごめん、、なさい」 「ごめん、、、、、なさい、、、!」 「ごめ、、ん、、、な、、、さい、、、!」 ただただ、謝り続ける。 彼女の母親は、慌てた様に何があったのだとまくしたてる様に聞いてきた。 けれど僕はその問いに答える事は出来ず、ただただ謝る事しか出来なかった。 繁華街を彩る橙色がかかった煌びやかな電飾の数々が、僕を責め立てる様に輝き続ける。 紅葉と同じだ。 「、、、嗚呼」 、、、声が漏れる。
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