1人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
その後、僕は逃げる様に繁華街を後にした。
向かう先は家ではなく、桜並木の奥に佇む奇妙な『店』だった。
どうすればいいか考えた。
ただただ、考えた。
そうしたら、以外と簡単に答えが見つかった。
桜並木を、今までと比べて真っ直ぐと歩く。
空を見上げると、ポツポツと星が浮かんでいた。
繁華街から離れたからだろうか。
『店』の前に着くと、門の前に男が立っていた。
見慣れた顔だった。
僕と似た顔だった。
「いら、、、しゃ、、、い、、ませ」
掠れた声で目の前の男が言った。
「今夜は、、二回目ですが、、、どの様な、、、ご用件で?」
覚悟を決め、息を呑む。
「僕自身を彼女と引き換えに売らせてくれ」
自業自得なので、何も誇ることの出来ない自己犠牲、これしか今の僕に出来る事はなかった。
「承り、、、ました。」
目の前の男が、薄く、笑みを浮かべた様な気がした。
◇
小さなマンションの一室で、いつもの様に私は目を覚ましました。
やはり、空白の二週間の事は、今日の朝になっても思い出せません。
「、、、、んっ」
寝起きの身体を伸ばすと声が漏れます。
、、私は二週間の間、記憶を失っていました。
目を覚まして携帯を見た時は、とてつもない程に驚き、仰天したのを覚えています。
すぐさま、昨日の私は勤めている会社に行きました。
もし、私が2週間もの間、何らか理由で眠りこけていたとしたならば、会社をクビになってしまうからです。
そして結局、普通に怒られてクビになりました。
理不尽な話です。
あまりに理不尽で、鬱屈とした気分になりってしまいました。
部屋の空気を入れ替えようと、窓を開けます。
すると、この辺りには無いはずの紅葉の葉がヒラヒラと飛んできました。
何故か私には、その紅葉が謝っている様に思えます。
すると、何故だか震えが止まらなくなりその場に倒れこんでしまい、心にぽっかりと穴が開いた様に息がしにくくなりました。
私は不可解な使命感に誘われて、着替えて外に出ます。
すると、何処に行くともわからない足取りは、見た事のない一本道にたどり着いていました。
私はその一本道をフラフラとした足取りで歩きます。
歩きます。
歩きます。
最初のコメントを投稿しよう!