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使ったティッシュやレシートなど、本当になんの意味のないゴミのようなものまでも、お金になって返ってきたのだ。
ただし『取引』には、ルールが存在する。
自分が「使った」か「生み出した」ものでないと換金出来ない。
そして一度換金した物は、もう二度と取引に使うことは不可能。
レートは、レシートなどのゴミが1000円程度。大量のゴミを持っていけば100万円程になった。
しかし、しばらくゴミを差し出していたら、ゴミの種類に限らず換金はしてくれなかった。
その事を男に問いただせば
「あなたが、、、何かを、、捧げるということに、、意味がある、、私達は廃品回収、、業者じゃない」
と、袖に振られてしまった。
僕の書いた小説なら大金になると言っていたが、いくら机の前に腰を下ろしても筆が進まなかった。
ので、仕方がなく。髪の毛や排泄物などの体の一部を『店』に捧げるようになっていた。
排泄物だろうと何だろうと、体の一部は、非常に高い値段がついた。
しかし、大抵遊びに金を使ってしまうので、すぐに大金も底をついてしまう。
そして今夜も、自らの爪を捧げようとしていた。
フラフラとして危うげなステップを踏みながら、家に帰る。
到着し、部屋の扉を開けて玄関に入ると、ジャージのポケットが震えていることに気がついた。
携帯が鳴っている。
「、、、、またか」
舌打ちを鳴らしてポケットに手を突っ込み携帯を取り出した。
するとやはり、画面に映し出されるのは知らない番号だった。
ひょっとして彼女じゃないかと、薄い期待を抱いていたため裏切られたような気持ちになる。
振動音が妙に不愉快になり、地面に携帯を叩きつける。
「ぅぅぅぅぁあああああああ!!」
もう深夜だというのに、僕は不可解な動機で咽び泣いた。
六畳間の端で喚きながら、
爪を
一本
一本
一本
一本
一本
◇
翌日、僕は血みどろになった手足を洗面台洗い流し、異様に鉄臭くなった部屋で夜になるまで眠り続けた。
忌まわしい夕暮れ時を睡眠の中で過ごし、時計の針が夜の9時を指したころ、僕は目覚めた。
畳に根を生やした体を無理やりに剥がし、六畳間に立つ。
爪を剥がしたことによる疲労感だったろうか?
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