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血を流しすぎたことへの貧血症状だろうか?
それとも、
怠い。苦しい。辛い。そんな感覚が脳を支配する。
こんな時に彼女が居てくれればいいのに、そう考えてしまう。
こんな風になってしまった僕を見捨て、今は別の男とでも寝ているのだろうか。
倦怠感のあまり、良くない想像が脳裏によぎる。
彼女、、、そう言えば、と思い、僕は昨日投げ捨てた携帯を拾い上げた。
充電残量は既に虫の息だった。画面に映るのは、あの知らない番号からの不在着信。
本当は知らない番号でも出るべきなのだろうが、何故か僕はこの電話をかけ直してはいけないような気がした。
何故かはわからない。
「、、、外に、出よう」
掠れた声を漏らす。
誰かに似た掠れ声を、、、
僕は台所に置いておいたコンビニのレジ袋に詰めた爪を持った。
気怠さに支配された体を無理やりに叩き起こし、玄関から無理やりに体を放り投げる。
フラフラとした危なっかしい足取りでアパートの外階段を降りていく。
そのままの足取りで『店』に向かう。
自分の行動が恐ろしく醜いことも、ハッキリと理解しているというのに、それをやめようとは思わなかった。思えなかった。
夜の闇に隠される紅葉にジロジロと見つめられながら歩みを進める。
何度も吐きそうにながら、歩く
歩く
歩く
歩く
足が止まる。
目の前に人が立っていた。
蛍光灯に照らされるその人の特徴は、長身で短い髪。
いつかよりはクマが減った顔。
血走った目も今は健康そうな色に変わっている。
「、、、先、、輩?」
『店』に関わる原因となったその男が目の前に居た。
掠れた声が
漏れる。
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