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「ははっ、よしよし」
頭の上に顎を置かれているせいで顔を動かせないため、頭を撫でようと手を伸ばしてみたけど実際撫でたのは頬だったみたいだ。
そこで静かになった空間にはっとする。
ノリが小吉と似ているせいで思わずいつものような対応をしてしまったが、話すようになって間も無くの男に頬を撫でられるのはどうなのだろう。
「…あ、悪い、いつもの癖で、」
慌てて祥太郎の頬に添えたままだった手を引っ込めようとすると勢いよくその手を掴まれる。
「癖って、いつもこういうこと小吉にはするの?」
「え、あ、ああ。まあ小吉ぐらいだろうな」
「へえ、」
そもそも小吉以外に友達いないからな…
怒気を含んでいる訳ではないが先程までのおちゃらけた雰囲気もなく、淡々とした口調からしてやはり気に障ったんだろう。
「悪かった、もうしない。気をつける」
「なんで?俺、ハジメの手好きだな。もっと触って欲しい」
「あっ、おい!」
祥太郎が俺の手を握ったままもう一度自らの頬に添えるのをみた小吉が声をあげたが、本人は素知らぬ顔だ。
手が好き、とは初めて言われた。
纏う雰囲気が変わったように感じたけど嫌ではなかったみたいだからそこはよかったと思う。
せっかく仲良くしようと言ってくれているのに早速仲違いするようなことは避けたい。
「これからは俺にもしてね。仲良くするんだから小吉だけは狡いよ」
「…そうか。わかった」
「ふふ、よろしくねハジメ!」
いつも無意識で、しようと思ってしている訳ではないし、何が狡いのかよく分からないのだが一応返事をしておく。
祥太郎のご機嫌はよろしいようなのでおれの返答は間違ってはいなかったらしい。
だがそれに比例して小吉はあまり気分の良い顔はしていないこと、そして廉太郎がじっとおれを見つめていたのが気になるが。
しかしタイミングよく流れた一限の終わりを告げるチャイムを区切りに、おれたちは解散することになった。
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