▲ROUND3

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「いーち、いるかー?」 ホームルームが終わり人がまばらになってきた頃に諸悪の根源ともいえる男、桐嶋岳が教室のドアから顔を覗かせる。 そういや、放課後呼び出されてたんだった。 思い出してげんなりしていると顔に出ていたのか近寄ってきた桐嶋岳に頭をはたかれた。 「おいコラなんだあその顔はー?待ってたの!って笑顔で駆け寄ってくるぐらいの可愛げがあるといいんだけどな?」 「あんた、趣味悪いな」 「そうか?むしろそのうち自分から尻尾振るようになるのが楽しみだ」 するかアホ。 口に出すと面倒なので心の中で毒づくがにやにやと口元を歪める桐嶋岳には見透かされているような気もする。 この前から思っていたのだけど おれに可愛げなんてものを求めてみたり、キスしてみたり随分と趣味が悪いとしか思えない。 桐嶋岳の対象が男であろうと女であろうと、どちらでも興味はないが からかうにしてももっと反応の良いやつにした方がいいんじゃないか。 この顔じゃ相手なんて湧いて出てくるだろうに。 「そういや、相良は一緒じゃないんだな。あの様子じゃ絶対ついてくると思っていたが」 「…小吉なら用事があるらしいから」 桐嶋岳のいうのがどの様子なのかよくわからないけど朝の口ぶりからして放課後は空いていたようだし、おれも小吉ならこういう場合きっとついてくるだろうと思っていた。 しかしなぜかホームルームが終わると同時に用事があると言って何かを追いかけるように足早に駆けていってしまった。 俺がいるとかのたまってたくせになんなんだよ、小吉のやつ。
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