存在

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目を閉じれば 世界は闇に消え 耳を塞げば この世は無声映画   確実など何もない 不確かなこの世界を 人々は信じ込み それがすべてだと。   私をここに繋ぎ止めるsignal 今にも消えてしまいそうで 私の目の前にあるものが 確かにそこにあることを思う     "我想う、故に我あり" デカルトは言うけれど それじゃ我無きに同じ 独りでは生きられない   目が醒めたら寝台 白衣姿の人が言う 「今までどんな夢を見た」 この世は一体何でしょう   私の目の前にいる貴方が そこにいることを教えて 愛しい声も眼差しも 私が作った幻ですか?     こんなにも不確かな世界で 一生懸命になんかなれない 確信が欲しい証明が欲しい     愛しい貴方の存在すら 解らないような世界で 何を信じ何を想い 何のために生きればいい?   もし全てが夢だったら? もし貴方が幻だったら? どれほど怖いことでしょう どれほど悲しいことでしょう…     だから人は夜毎 愛するものに触れ 抱き締め合う   不安に潰されて 信じられなくなる前に 目の前の貴方を 抱き締めたい   この腕で。
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