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白い煙が止み、現れたのら炭ではなく、寧ろ真っ白で柔らかそうな粒の集まりだった。
古釜に満遍なく敷き詰められている。
予想は大きく外れてしまったが、その純白に免じてその人間を許したくなる。
その白さは、人間の言葉を借りるなら神々しい、か。
それほどまでに、白く柔らかそうなそれは輝きを放っていた。
松明の火の光でこれほどまでに輝いて見えたのは大判小判を除いて他にない。
人間に訊くところによると、これは米らしい。
ぼくは思わず人間に向かい前のめりになった。人間は狼狽し、後ずさる。
あの痩せ細った穀物が「米を炊く」という儀式をするとこんなにも膨れ上がるなんて思いもしていなかった。
米には八十八の神が宿るという言い習わしは案外嘘ではないかもしれない。
そう考えていると、人間はいそいそと湧き水を汲んでおいたもう一つの古釜に薄い木板を浸すと、水切りし、米をかき混ぜると、三枚の葉にそれぞれ均等に米を盛った。
人間は米を全て盛り終わると、その場に倒れ込み溜息を吐いた。そして、まるで憑き物が祓われたかのように顔色が良くなっていく。
この島にお供とともに乗り込んできたときの顔色に段々近づいてきた。
ぼくはそんな人間に、こうなってしまった米は食べることが出来るのか、と訊くと人間は無言で頷いた。
へえー、食べることが出来るのか。まだ良い匂いが立ち込めるし、いつも食べている硬い米より美味しいに違いない。
そう思っていると、後ろから大きな掌に乗せられた葉がぼくの前に置かれた。
母上の掌だった。
母上はぼくの前に葉を置くと、倒れ込む人間を跨ぎ、洞窟の外にいる父上を呼びに行った。
それを確認すると、ぼくはその葉の上に盛られたものを見た。
それは、母上が焼き加減を誤ったせいで少し黒ずんでいるが、間違いない。キジの丸焼きだった。
このキジは、そこで倒れ込んでいる人間のお供の一匹で、空から父上に突いて攻撃してきた不届き者だ。他にも犬と猿が襲撃してきたが、他の鬼達が協力し合い、討ち取った。
今頃はそれぞれの鬼の胃の中だろう。
キジと人間は父上が捕まえ、ぼくの家族が引き取ったのだ。
人間は、向こうの方ではそこそこ腕がたつらしいが、所詮は井の中の蛙だったわけだ。
人間とは悲しかな、自他との力量差も測れないものなのか。
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