弐 河原

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 鞘の感触すら感じることなく  刀筋を僅かに逸らして  下段から跳ね上げる  難なく躱(かわ)す若者    頭部を狙って迫る切っ先を  首を振ってやり過ごすと  流れを途切れさせることなく  中段からの突きが伸びてくる  その鋭さに思わず  口角が歪む  左脚を蹴って躱すと見せて  そのまま上半身を沈めた  刃を反転させながら、引き寄せて  此方も死角からの突きを仕込む  仇討ちへの暗い情念が  若者をして反応せしめた  大きく見開かれた、幼さの残る瞳に  彼の幼少期を想起する  受けるなら  いまここしかなかろう
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