4人が本棚に入れています
本棚に追加
鞘の感触すら感じることなく
刀筋を僅かに逸らして
下段から跳ね上げる
難なく躱(かわ)す若者
頭部を狙って迫る切っ先を
首を振ってやり過ごすと
流れを途切れさせることなく
中段からの突きが伸びてくる
その鋭さに思わず
口角が歪む
左脚を蹴って躱すと見せて
そのまま上半身を沈めた
刃を反転させながら、引き寄せて
此方も死角からの突きを仕込む
仇討ちへの暗い情念が
若者をして反応せしめた
大きく見開かれた、幼さの残る瞳に
彼の幼少期を想起する
受けるなら
いまここしかなかろう
最初のコメントを投稿しよう!