四 小太刀

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 いつ利き腕に持ち替えたのか  おそらく、二閃  否、三閃か  早々に呼吸を放棄して  目を頼るのも諦めた  足を見れば足に惑わされ  視線を探れば視線に欺(あざむ)かれる  最早、刀を持ち替える余裕は残されず  いつ抜かされたのかすら、わからない  手首を引き寄せ、ただ守りに徹する    眼下で一歩踏み込んだ女の軸足が  さらにそのままもう二歩  踊るが如く、踏み進んできた  それは如何なる動きか  探る猶予も与えられず  守りの一薙(ひとな)ぎを苦し紛れに振るわされる  冴えを欠いた円弧は容易く見切られ  相手の刀筋は常にやや速く  もしくは、やや遅く  こちらの見切りを外して薄肉を削る
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