弐 河原

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 真正面から  この身を貫く殺気と対峙する  微かな濁りもなく  僅かな歪みすら寄せ付けず  中段に構えられた白い抜き身から  煌と匂い立つ殺気  対する此方は  ただ、間合いの外に立ち尽くし  その殺気を涼と受け流すのみ  まだ抜かない  否、抜けずにいる    若い殺気に応じることなく  ただ、静かに視線だけを交わす  互いに、間合いを見極めている  蝉の音が緩やかに溶けて  参れ、と微かに肯首した刹那  若者の剣先が反応した  一息に間合いが詰まる  その身のこなしは  此方の予想を遥かに上回った  いや、些(いささ)か揺らぎが足りぬか  此方の呼吸は乱れていない  まず、若者の足を視界におさめて  数瞬後の動きを読んだ  次に  彼の目を捉える  相手の刀は左上段  呼気を止めて  機を計る
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