#5 最愛に気づく男

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「浅野さんももっと自分を大切にしてください」 もう一度真剣に誰かと向き合って。体だけ、上辺だけの付き合いをするなんて浅野さんには不釣り合い。本当は愛情深い人だって私は知ってるから。 「仕事も、無理しすぎです。だから倒れるんですよ」 「本当に君は……」 浅野さんの両腕が私を抱いた。 「ずるいのか優しいのか分からない……」 「浅野さんにだけはずるくもなるし優しくもなるんです」 「僕だけ?」 「浅野さんだけです。私が感情を揺さぶられるのはたった一人」 耳元で浅野さんがフッと短く息を吐いた。 「そうやって僕だけに一喜一憂する、真っ直ぐで一途で可愛い君に惹かれたんだよ」 その言葉を聞いて浅野さんのシャツをぎゅっと握った。 「浅野さんは私を振り回しすぎです……」 「それは僕のセリフだよ。君には振り回されっぱなしだ」 浅野さんが深く息を吐いたから胸が上下する。 「君のせいで怖いんだ」 「え?」 「好きになりすぎて離れてしまうのが怖い。またいつか僕は捨てられるんじゃないかって……」 不安そうな顔をして私を見つめ返す。 「私はずっと浅野さんが好きだった。入社したときよりも前から。婚約されていた頃から……」 あなたと美麗さんが結婚してしまうのが辛かった。だから結婚式を壊してしまった。 「ごめんなさい……もしも……もしも、許してくださるなら、私は……」 「美麗が僕を捨てたのは君のせいじゃないよ」 浅野さんは私の言葉を遮って話し始めた。 「君が何もしなくても、美麗とはきっと長くなかった。妊娠したことだって、いずれ僕の子じゃないことはわかるから。君は自分が結婚式を壊したと思っているかもしれないけど、最終的に僕じゃない男を選んだのは美麗だよ」
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