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教会前の広場から海へと下る舗装路を視線で辿ってゆくと、ほどなく小さな船着場が目に入った。
数隻の漁船が所在無げに波に揺れている。
残りは漁に出ているのだろうか。
周囲に視線を走らせる。
十数戸の古びた民家が、教会前の広場を囲んで肩を寄せ合っている。
教会の背後は小高い丘になっていて、その中腹に長方体の石が雑然と並んでいるのが見えた。墓地だろう。
海風になぶられながら、ただ黙して林立する石群。
その光景は、旅行地図に決して載ることのないこの漁村に、いかにもふさわしい。
私は暫時、視線を引き剥がせずに佇んでいた。
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