第1章

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「ほら受け取れ」 副操縦士が固形食料を私に手渡してきた。 「これで最後か?」 「ああ」 固形食料を口に含み、唾液でドロドロになるまで溶かしてから飲み込む。 ゴク。 固形食料1個で、1日に必要とする栄養とカロリーに水分が摂取できるが、少しでも長持ちさせるため、私達は3日で1個摂取するのに留めていた。 3日ぶりの食事の余韻を楽しんでいた私達の耳に、操縦室のドアが通路側から乱暴に乱打される音が響く。 遂に来た。 副操縦士と顔を見合わせ互いに頷きあい、通路に設置されているカメラの映像をモニターに映す。 モニターに映し出されたのは、やせ細り理性を無くした数人の乗員乗客の姿だった。 彼らの腹を満たす食料は、私と相棒の副操縦士しか残っていない。 ドアを破壊して操縦室に入り込み、私達を餌にしようとする人の数は、少しずつ数を増やしている。 私はモニターを見ながら、この状況に陥るまでの時の流れを思い起こしていた。
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