5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほら受け取れ」
副操縦士が固形食料を私に手渡してきた。
「これで最後か?」
「ああ」
固形食料を口に含み、唾液でドロドロになるまで溶かしてから飲み込む。
ゴク。
固形食料1個で、1日に必要とする栄養とカロリーに水分が摂取できるが、少しでも長持ちさせるため、私達は3日で1個摂取するのに留めていた。
3日ぶりの食事の余韻を楽しんでいた私達の耳に、操縦室のドアが通路側から乱暴に乱打される音が響く。
遂に来た。
副操縦士と顔を見合わせ互いに頷きあい、通路に設置されているカメラの映像をモニターに映す。
モニターに映し出されたのは、やせ細り理性を無くした数人の乗員乗客の姿だった。
彼らの腹を満たす食料は、私と相棒の副操縦士しか残っていない。
ドアを破壊して操縦室に入り込み、私達を餌にしようとする人の数は、少しずつ数を増やしている。
私はモニターを見ながら、この状況に陥るまでの時の流れを思い起こしていた。
最初のコメントを投稿しよう!