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相変わらずの細身の体に、トレードマークのツヤツヤした絹のような髪。
スッと伸びたモデル並みの長い首が、今日のラフなジャケット姿を絶妙にスタイリッシュに見せている。
純日本人体型の自分とはえらい違いだと、彼を見るたび思うが、今日は自分が「隆也」ではなくて「ウサギ」なので、ちょっと劣等感は薄い。
ウサギで良かった。
しかし、目の前の春樹を見ながら、隆也は首を捻った。
少しばかり、様子がおかしい。
斜め向こうの人の波の方に視線を向け、ボンヤリして突っ立っているのだ。
誰かを捜していると言うより、何かに驚いているように感じた。
けれど、それを慮る余裕は隆也にはなかった。
一刻も早く計画を実行に移さねば、体が持たない。
隆也はポフポフと足音も立てずに春樹の背後から近づき、ぼんやりしているその背中にガシッと勢いよく飛び付いた。
「あっ……」
しかし春樹はチラッと肩越しにこちらを振り返っただけで、特に大きな反応は見せず、またぼんやりと視線を人混みに移した。
《えーーっ!》
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