ナイトメア・ブラック

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 *****  いつからだろうか。  ふと気付くとその奇妙な店はそこにあった。  遠目に見ただけでは、何の店なのかさっぱり分からない。まるでわざと人を寄せ付けないような佇まいだ。  くたびれた看板にはこう書いてある。   『Black Dream』    直訳すると、黒い夢。  不気味さはあれども別段変わった店名と言う訳ではない。  ゴシック感のあるクラシカルなデザインの外観からは、お洒落な喫茶店という印象を持つ。  いつもの学校帰り、通りを挟んだ向こう側にあるその店を訝しく思いながら、羽村由衣(はむらゆい)は足早に通り過ぎようとしていた。    黒い夢か……  黒い……夢――    ぴたりと、由衣は突然歩みを止めた。  今日に限って、何故だかあの店が気になって仕方がない。  通学カバンを抱え込み、キョロキョロと車が来ない事を確かめると、通りの向こう側へダッシュで駆け込んだ。    (ああ、やっちゃった信号無視……)    真面目な優等生はそんな自責の念を抱いた。   そろそろと店の前に立ち、扉横のウインドウから中を覗こうとするが、薄暗くて殆ど何も見えない。  どうしよう。いっそ中に入ってみようか。  そう思いながらもなかなか行動に出る事が出来ず、暫く扉の前をウロウロとしていた。    チリンチリン――    「え?」    突然、店の扉がドアベルの音と共にゆっくりと開いた。  それはまるで、由衣の事を招き入れるかのように。    (何、これ。私まだドアノブに手をかけてもいなかったのに……自動ドアなのかしら?)    疑問を抱きながらも、由衣は恐る恐るその店の中へと足を踏み入れた。
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