麗しのアンコール

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身体が触れ合うところから体温が湧き上がるように上昇するのがわかる。互いの熱を伝え合い、止まることなく熱は昂り、皮膚の表面にうっすらと汗が纏われていく。 性的欲求に急いているのに、薫とこうしていると光の中に互いの想いと熱を刻み込んでいるような気がしてくる。 薫は特別だ、と思う。愛しくてたまらない。その気持ちは純粋なのに、視線ひとつで欲情を掻き立てられる。そして触れたら、もっと愛しいと思う繰り返し。 一瞬一瞬、気持ちが塗り替えられていく。知らなかった自分の気持ちをいつも嫌という程知ることになる。 シャツの裾から手を差し込みしっとりと熱を纏った肌を辿り、撫で上げる。胸の突起を円状にくるくると弄ると、そこはすぐに反応し僕を喜ばせる。指の先を立て小刻みに揺らし柔らかく引っ掻いた。 「そんな、とこ…んっ……」 ほんの少し漏れた声がいつもに増して可愛いくて、つい繰り返し苛めてしまう。小さな器官が硬さを増して尖り快感を訴えてくると、こちらの方がたまらなくなる。シャツの裾をめくり上げ、待っていたかのように鮮やかに色づいた胸に唇を落とす。 「やっ……」 息を詰めて声を抑えるから、もっと声が聞きたくて舌先で何度も舐め上げ膨らみを転がした。もう片方は指先で柔らかく摘む。ますます熱を帯びて伝わる息遣いに、どうにかなりそうだ。 冷静さのかけらもなく下肢を触れ合わせてしまう。すでに下着は窮屈で、溢れ出すもので湿り気を滲ませているのが自分でもわかる。 溢れる劣情は性急すぎて、先が見えない。今度は形のいい顎先を捕らえ舌を口内にさしいれ荒く中をかき回す。唇を合わせるどころじゃなく、貪るように柔らかな粘膜を奥まで探った。早急に欲しくて、ちっとも優しくできないでいて焦る。 「薫さんが、欲しい。…いいですか?」 シーツに抵抗なく身体を沈ませる薫は、見慣れた景色を全部変える。たった数秒の答えを待ちきれず高まる鼓動の中で、濡れた唇が動くのを見つめる。 「いいよ…きて…」 瞬間、全身がざわめいた。ずるい。あんなに照れていたくせに、今は誘うような音色を響かせる。 以前、汚されたくないものを投影して自分を『神聖視』しているだけだと言われた。薫があまりに綺麗であまりにまっすぐだから、触れてさえいけないような気がしていた。 その手を取るまで随分と遠回りしてしまった。緩やかに少しずつ歩調を合わせここまで来た。
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