麗しのアンコール

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「好きだ、純央。好き…」 目頭がきゅうと引きつる。嬉しい時には泣かないと決めた。 好き、好きだ。熱はいつまでも冷めない。浮かされたように何度も口づけあう。ちゃんと自分が言葉にして伝えているのかさえ、よくわからない。やっぱり、ひどく甘くて切ない。そして熱く惹きあって止まない。 いつまでも、こうしていたい…。 * * * 朝の自然光で目が覚めると、すぐ近くにほっととするようなくつろいだ寝顔があった。長い睫毛に目を落とす。足が絡められぴたりとくっついているので動けない。 白いシーツに小さな赤い血の跡がついていたので驚くが、それは位置から薫の指から絆創膏が取れてしまったからということに気づき安心する。唐突に、あなたがここで息をして、言葉にならない声を吐き出し、何度も求め合ったことを実感して、愛おしさがこみ上げる。 髪を光に透かしながら撫でる。ファンタジーでも夢でもない、薫は僕の腕の中にいる。 「ずっと大切にします、僕の姫…」 「…純央、もしかして俺のこと頭の中で姫って呼んでる?」 眠っていると思っていた薫が、急にとてつもなく色気のある顔で薄く目を開けて喋るから、どきりと心臓が跳ねる。 「時々…いや、たまーに…です…なんとなくそう思った時とか…」 言うほど言い訳がましい。本当は、思えばずっとそう呼んでいる。出会った時から薫は可憐で、みんなが思いを寄せる存在で、守りたくなる儚さを漂わせていて。むしろ男らしい性格なのに、僕の中では姫だった。手の届かない尊さを薫に見ていた。でも今は…… 「俺は女じゃないよ」 「わかってますよ。僕のとても大切な美しい人、っていう意味です」 「んー……」 照れているのだ。可愛い僕の姫に口づける。 「薫、好きだ」 「俺も好きだよ、純央」 ふわりと表情を緩め、笑い合う。どちらともなく指を絡め手を繋ぎ、もう一度唇を合わせる。 どの瞬間も、惹かれ続ける。これからも、愛しく想い続ける。 僕の麗しの姫君。 merci encore!! 2015 秋 2016 秋 改稿 最後までおつきあい頂き、本当にありがとうございました。
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