45人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、忌々しい携帯電話を、それでも大人の余裕をもって静かに置き、
自分の横のグラスへと手を伸ばす。
そして、水滴が流れ落ち、すっかり濡れているグラスの表面を
ティッシュで丁寧に拭って、ゴクリと喉を鳴らして
大きく一口ジュースを飲んだ。
ところが、
あれ? 分量、違ってないのに――。
私は、思わずグラスの中を覗きこんだ。
なんだか、ビタミンジュースの爽やかさも気が抜けて、
すっかり苦味だけが残っているような気がする。
そう小さく首を傾げた時、またしても携帯電話が鳴りだした。
こんなに暑い日に、爽やかさを望んでも無理ということだろうか。
だから、つい独り言が零れでる。
「今度は、誰っ!」
しかし、やはりこの日はビタミンジュースの効果も望めなく、
爽やかにはなれそうもないらしい。
「もしもし、美沙ちゃん? あっ、お母さん。
ねぇ今度の水曜日、うちに来るでしょ?
お誕生日のプレゼント、何がいい?」
まだ私は、行くとも行かないとも言ってない!
そして私は、今度は、素直に出来るだけ音をたてずに溜息をついた。
絶対に、「よんじゅう」の呪いだぁ――。
最初のコメントを投稿しよう!