第4章  デジャヴの贈り物(続き)

16/32
前へ
/37ページ
次へ
「どう? こっちの住み心地」 「うん、もう楽よぉ。 お掃除だってチャチャチャって済んじゃうし、 スーパーだって、この下にあるでしょ?  まぁ、わたしには必要ないけれど随分と遅くまで開いてるのよ、そこ。 おまけに、重い物なんかはね、 二千円以上買うと、店員さんが無料で宅配してくれるんだから。 もう本当に、こっちに引っ越してきて良かったわ」 満足げな母に、わずかに微笑んで「そう」と頷く。 だが同時に、なんとなく彼女との間に妙な距離が出来たような 感覚をおぼえた。 確かに、やや強引な父とマイペースな母。 そして、エネルギッシュに突っ走りたがる私と、 我が家は、決してほんわか和気藹々家族というわけではなかった。 しかし、だからと言って、仲が悪かったわけでもない。 実際私は、実家を出るまで、両親に隠し事などしたことがなかったくらいだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加