第4章  デジャヴの贈り物(続き)

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もちろん、留学を機に実家を出た私とは、 その後、それなりに自然な距離はできた。 そして大人になった分、両親に言わない事もそれなりに有った。 だが今、私が感じている母との距離は、それとは何かが違うように思える。 いや、「距離感」というよりも、 むしろ「違和感」といった方が近い気もする。 そして、改めて思う。 そういえば、お父さんが亡くなってから 私が、お母さんに腹を立てることが多くなったかも。 でも、どうして――? 私は、「美沙ちゃんが、四十歳だなんてねぇ」と 苦笑をしながら母が出してきた真っ白い正方形のショートケーキを ぼんやりと眺めた。 そして、はたと思い至る。 そうだ。去年は、これよりも少しだけ大きなケーキだった。 だが父がいない今は、その分、小さくなったのだ。
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