第4章  デジャヴの贈り物(続き)

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私は、母に言われるままに、 ケーキの上にのった四本の赤い蝋燭の火を吹き消した。 途端、わずかに蝋の溶ける残り香が 淡い煙に乗り、かすかに私の鼻腔を刺激する。 そして、その刺激に反応するかに、ふと脳裏に父の顔が浮かんできた。 そうか。今まではお父さんがいたから、私は自分の事だけしていられたんだ。 社会経験がないまま、父に嫁いだ母。 だから、従順な妻であったものの、 マイペースで、どこか世間知らずだったことは否めない。 そしてこれまでは、そんな母が本来持つべき表の顔を 全て父が担ってきたのだろう。 だが、父亡き今、それを私が担わなくてはならなくなったというわけだ。 もちろんそれに加え、これからは 母の「老い」というものも少なからず私の肩に掛かるのだろう。
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