第4章  デジャヴの贈り物(続き)

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私は、向かっているパソコンのキーボードに胸の内の不安を短く打ち込んだ。 ――よんじゅう。 なんと、淀んだ響きだろう。 私は、慌ててそれを画面上から消すと、別のものを打ち込んだ。 ――しじゅう。 うわぁ! 思わず心の中で叫んで顔をしかめた私は、 あり得ない事実でも突きつけられたかに左右にかぶりを振る。 もうここまでくると、醜悪の極みだ。 もちろん、誰しも生きていればこの年を平等に迎えるわけで、 それを「醜悪」などと言っては、 既に、それを迎えられた人々に申し訳ないことは十分わかっている。 しかし、たとえ秒読みであろうとも、 まだ、それが現実となっていない私の立場から言えば、 それはちょうど「中年」の奈落の淵に立っているようなもの。 出来るならば進みたくはないと抵抗するのも、無理からぬ事ではなかろうか。
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