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たったグラス一杯のシャンパンに、酔ったわけでもないのだろう。
だが帰路についた私は、すっかり夕飯を作る気力もなく、
横浜駅の近郊で適当に惣菜を見繕って電車に揺られた。
そして自宅の最寄り駅に着いてみれば、既に辺りは宵に暮れかけている。
うわ……、滝嶋のご機嫌が思いやられる。
ここまで遅くなるつもりもなかっただけに、
私は、少し焦って駅前にまだ数台いたタクシーに乗り込んだ。
小さな繁華街をつくっている駅前では、
宵に溶け込む昼の面影に縋るように必死に鳴いている蝉の声が
もんわりと渦を巻いている。
そして、恐らく今日も完全に日が暮れて一時間程度は、
まだ暑さが残るのだろう。
その現実にうんざりする反面、昼間に浮かんだ母との未来から
少しだけ目を背けられるこの物理的距離が、
気持ちのどこかをホッとさせていた。
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