第4章  デジャヴの贈り物(続き)

8/32
前へ
/37ページ
次へ
いけない。 本の登場人物に八つ当たりをしても、何の解決も望めるわけがない。 私は、小さく肩で息をつき、 もう一口、ジュースを含もうとグラスを口元に運んだ。 ところが、その時、不意にデスクの上の携帯電話が鳴り始めた。 そして、液晶画面の上には「田村 泰彦」の文字が並ぶ。 しかし、夏はどうしても起きるのが早くなるため、今は、まだ朝の八時過ぎ。 もちろん週末でもないから、彼は、まさに出勤途中なはず。 そんな事を瞬時に頭に巡らせ、首を傾げながら電話に出る。 ところが、 「あっ、美沙ちゃん?」 少しざわつく背景の中での彼の声は、ひどく焦っていた。 しかも、 「あのさ、来週の予定は?」 おはよう、の挨拶もなしの唐突な質問。 当然、私の中には「?」が大きく浮かんでくる。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加