だれかが落としたもの

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 その奇妙な店は、だれかが落としたものを売っていた。  いわゆるジャンク屋の類いで、店先には、画集の切れ端やら穴の空いたフライパンやら……およそ役に立ちそうにないものばかり置いてある。はたして商売が成り立っているのか疑いたくなるラインナップだ。が、なぜか訪れる客は多い。  この青年も客の一人だった。  青年は入口の前で、神妙な顔をしていたが、やがて意を決したかのように足を踏み入れた。薄暗い店内には、ゴミとしか言いようのない商品が無秩序に並べられている。その一つ一つへ真剣なまなざしを向けていると、ふいに声をかけられた。 「探しものはなんですか? それは落としたものですか?」  どこかで耳にしたようなフレーズを口にしながら近寄ってきたのは、若い女性だった。レンズのないメガネをかけ、よれよれのシャツに虫食いだらけのジャージを身につけ、左右非対称の靴を履いていてる。  この異彩を放つ相手に青年があとずさりすると、若い女性は心情を察したらしく、首からぶら下げている社員証のようなものを見せつけた。
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