だれかが落としたもの

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「あ、ご安心ください。ここの店長ですから。いやー、いつもドン引きされるちゃうんですよー、このファッション。私の中では、ジャンクファッションっていう位置づけなんですけどねー」  笑いながら言うと、店長は改めて聞いてきた。 「すみません。話がそれちゃいましたね。で、今日はどのような商品をお探しに?」 「あー、その、……単位、なんですけど。ありますかねえ」  青年は弱々しい口ぶりで、相手の出かたを待った。  彼は大学四年生で、卒業後の就職先も決まっていた。しかし卒業に必要な単位をうっかり落としてしまい、わらにもすがる思いで、この店を訪れたのだった。 「なるほどー、単位ですかー。それって、けっこう落とす方々がいらっしゃるようですから、おそらくあると思いますよ」 「ホントですか?」 「はい。大学と学部がわかれば、すぐに確認できますけど」 「お願いします」  青年が大学名と学部名を告げると、店長はメモをとり、奥のほうへ消えてしまった。
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