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数分後。
「お待たせしました」
戻ってきた店長の手には、一枚の紙切れがあった。
『F大学 人文学部 近代文豪たちの光と影 単位数3』
「あ!」
それを見た青年は思わず声を漏らした。なんと彼が落とした単位だったのだ。
「これ、本当に単位なんですか?」
「はい。落ちていた単位です」
「いったいどこで拾ったんです?」
「言えません。ふふ。企業秘密です」
笑顔ではぐらかされ、余計気になったが、青年にとって今大事なのは、この単位をなんとしてでも手に入れることである。さもなければ、内定とり消しと留年が決定してしまう。
「まあ、深くは追究しませんけど。ところで、この単位はいくらですか?」
青年は声音を低くし、本題に入った。ごくりと息をのむ。このためにと通帳から貯金をすべて引きだしてきた。が、しょせん学生の全財産。たかが知れている。
もし足もとを見られてしまったら? そんな恐怖が心の中で渦巻いた。
店長の唇が動く。
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