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仕事でもこんな時間から出ることはない。
これでくだらない用件だったりしたら、恨むぞ倉松。
マンションを出て、徒歩約10分。
目的地は一軒家。
ただ、こんな早い時間に呼び鈴を鳴らすのは気が引ける。
なんで実家暮らしなんだよ。
心の中で悪態をつきつつ、倉松を呼び出す。
「ついたけど」
『わかりました』
ホント俺、何やってんだろう。
自問自答しても、何も答えなんか出やしない。
「おはようございます、ささ、どうぞ」
「ちゃんと説明しろよ、朝早くから呼び出した理由を」
「それはもちろん、部屋に行ってから話します」
何やら楽しそうで、それを見る限りイイコトではなさそう。
「リヒトが朝から起きてるなんて、今日槍でも降る?」
階段を上がっていたら聞こえた声。
「あ、おはようございます。こんな時間にお邪魔してすみません」
「え?常識人?」
ただ挨拶しただけで、何その反応。
確実に血筋だろう、その子はどうも妹っぽい。
倉松は初めて会ったというのに紹介もしてくれないから、たぶん家族だろうと推測するしかないけど。
「あとで弓愛来ると思うから」
「ん~」
すれ違いざまにそれだけの会話。
この家の常識が計り知れない。
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