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なんでココなのか、今すぐ弓愛に聞きたい。
まぁどうせ、弓愛にはここしか浮かばなかったんだろうけど。
「天見さん?」
「え?」
「入らないつもり?」
できれば入りたくないところ。
でも、あたしが水が怖いなんてこと、このヒトには関係なくて。
極力、水槽に近づかないようにしよう。
「入りますよ」
笑顔が引きつりそうになる。
悟られないように先に入るけれど。
あぁ、やっぱり怖い…
そこかしこ水だらけ。
当たり前だけど…当たり前なんだけど!
体が強張るのがわかって、小さく自分を抱きしめて落ち着かせる。
数秒だったと思うけど、気合を入れ直して手を下ろした瞬間。
右手が温もりに包まれた。
「──え?」
「急に繋いでごめん。ソコで見てるヤツらからの命令で」
親指でクイッとその場所を指差して。
見れば、素知らぬ顔で立っている弓愛と理人さん。
いつから…イヤ、初めから見てたのか。
誰かがどうやって恋に落ちるか、自分の目で見て確かめたいんだろう。
めんどくさいな。
「命令、ですか…」
ぜったいおもしろがってる気がする。
でも、なんかちょっとだけ安心している自分がいて。
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