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誰の返事も聞かず、そのままズルズルと引っ張られて着いた先はトイレ。
「弓愛、何?ヒトを急にこんなところに連れ込むくらいなら、最初から一緒に行動すればいいでしょ」
「イイエ、デートの邪魔はいたしません」
何言ってんだ。
今おもいっきりしてるじゃないか。
「私達は近からず遠からずで、どう恋愛に発展していくのか見ているだけですもの」
「意味わからん」
「ただ、さっき思い出したのです」
ここに連れて来られたけれど、弓愛は入る様子もなく。
他のヒトの迷惑にならない場所で、さすがに場所が場所なだけに小さい声。
「桜花が水が怖いこと」
「あぁ、言ったことあったのね」
「ハイ、高校1年の夏、プールの授業に出ない桜花を問い詰めました」
そんなことあったっけ?
全然、記憶にないや。
「それで、思い出したから引っ張ってきたの」
「そうです、チョイスを間違えました。水族館デートではなく動物園デートにすればよかったです」
うん、イヤ…動物園も水あるからね?
行ったことないのかと思わせられる口振り。
たぶん、想像止まりなんだろうね。
「あんた達が考えることがロクなことじゃないことはわかってる。だから、どこに行こうが変わりない」
「あら、桜花さん、そんなわけないじゃないですか」
トイレで威張るな。
しかも、その自信はどこからくるわけ?
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