simulation.6

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ほどなくして運ばれてきた料理をペロリと平らげて。 食後のコーヒーを飲んでいると気配を感じて顔を上げれば、私服姿の天見さんが。 「あれ?終わった?」 「ハイ、終わって賄いも食べてきましたよ」 残りのコーヒーをグイッと飲みほし、席を立つ。 「お疲れ、じゃあ行こうか」 「どこへ行くんですか?」 会計は先に終わらせていたからそのまま店を出て。 しかし天見さんのその言葉に足を止めた。 ノープランで誘って、しかも今の今まで何も考えていなかったよ。 ただ、一緒にどこかに行きたかったというだけで。 「どこか行きたいところある?」 「特にはないですけど…真殿さんは?」 「正直に言うと何も考えてなかったかな」 誘った本人にそんなことを言われると、普通はイヤな顔も1つもしそうなものなのに。 だけど、なぜか天見さんは楽しそう。 「映画とか言われなくてよかったです」 「なんで?キライ?」 「スキですよ?でも足元めちゃくちゃ冷えるじゃないですか、お腹痛くなっちゃうんですよね」 「あー、わからないでもない。俺は寝てしまうから映画館に行ったことはないな」 一度それで失敗したし。 できれば行きたくないところ。
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