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「俺さ、一生独身でいるつもりだったから、人生最後の買い物みたいな感じでここ買ったんだ」
それにはどう返していいのかわからず、手を引かれるままにエレベーターの中へ。
ていうか、いつまで繋いでいるんだろう。
なんか、あたしから手を離すタイミングがわからない。
「ようこそ、我が家へ。天見さんの実家に比べたら小さい家だけど」
「どこと張り合ってるんですか…お邪魔します」
なぜ比べるのかわからないけど、十分広いと思いますけどね。
「ソファー座ってて、コーヒーでいい?」
「あー、えっ…っと…」
「ん?」
誰にも言ったことがないから、これを言うのは気が引けるけど…
「ごめんなさい、あたしコーヒー飲めないんです」
「え?でもこの間飲んでなかった?」
「…ヒトは見た目で判断するんですよね。イメージが違うことをやったり食べたり飲んだりすると、勝手に幻滅したり」
「あー、うん、わかるかも。じゃあ、ホントは全然飲めない?」
「…甘ければ」
飲めないことはないんだけど。
やっぱり実家が和菓子屋だったから、飲み物って必然とお茶とかが多かったんだよね。
「…思ったこと言っていい?」
「あ、ハイ、どうぞ」
「甘いのしか飲めないとか、かわいいんだけど」
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