0章

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イグナシアス国。 その王宮には女人だけが住む宮がある。 落華宮と呼ばれるその宮は、名の通りに華が落ちる場所。 華とは女人である。 落ちるとは宮に入ること。 落華宮の門扉は常に開いている。望むなら入れと。 しかし、一歩踏み入れれば、落華宮からは出られない。間違って入った迷子であってもだ。そこは王の女人の宮である。 そこを目指す女人には覚悟が必要だ。宮の目的が成熟されるまで、女人には侍女ひとりもつかない。自分のことは全て自分でせねばならない。 王族の娘であっても、貴族の娘であっても、庶民の娘であっても、卑しき身分の娘であっても。 落華宮には身分がないのだ。 そこは王の女人の宮だから。 .
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