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その奇妙な店は商品と呼べる物が何も無く、童話に出てくる魔女の様な老婆がカウンターに居るだけだった。
どうやら深酒をして、何処かの建物へと迷い込んでしまったらしい。
「あれっ……ここは飲み屋じゃないの? ……あはは、間違えちゃったよ……あはは……」
「いらっしゃい。待っていたよ……」
怪しげな老婆は、まるで私が来る事を知っていたかの如く話し掛け、カウンターの下から5センチくらいの黄色い小瓶を取り出した。
「あれっ、ここは雑貨屋だったのか。……綺麗な瓶だね。せっかくだから、買っちゃおうかな。いくらだい?」
「ふふっ、お代はまだ決めてないのさ。あんたがこの薬を使って、満足したら相応の代価を頂く。満足しなかったら、お代は頂かないよ」
「これは薬なのかい? 何の薬なの?」
確かに小瓶の中には液体が入っている。しかし注意書き等のラベルは貼られて無く、得体の知れない怪しさが漂う。
「……本音を話す薬さ。人間って生き物は、本音を隠して生きるからね。重宝する薬だよ」
「あはは……良く分からないけど、面白そうだから頂いてくよ」
「まいど。私の名前は福与……覚えておいとくれよ」
こうして私は、黄色い小瓶をポケットに入れ家路についた。
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