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葬儀場へ着くと、すでに涙を流している人達が目に付く。
私は親戚一同の席に座り、辺りを見渡した。
すると、家族席に座っている無表情の女の子が視界に入る。よく息子の遊び相手をしてくれた、梶野さんの娘の風香(ふうか)だ。
ああ、この子も同じなのだ。
ただ一人残され、瞳の色を失っている。彼女がこれから生きて行くのはモノクロの世界なのだろう。
憐れみと言うよりは共感が胸に込み上げてくる。
複雑な心境のまま葬儀と火葬が終わり、親戚一同の食事会場へと移動した。
そこでは故人を偲ぶと思っていたが、話題は誰が風香を引き取るかで持ち切りとなっている。
我が家は余裕がない。
妻が了承してくれない。
共働きで面倒を見ていられない。
誰か余裕のある人は?
……
……
風香が同じ席にいるのに、何故この人達はこんな話が出来るのだろう?
もし僕ではなく、息子が一人だけ生き残っていたら、同じ目に遭っていたのだろうか?
ビールを片手にそう考えていると、いつの間にか無意識に声を出していた。
「僕に任せて貰えませんか? あっ……その……風香ちゃんがよければですが……」
近い親戚を差し置いて言い過ぎかと思ったが、返ってきた言葉は喜びと安堵が感じ取れるものだった。
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