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風香を引き取ってから三ヵ月が経過した。
「正さん、朝ご飯出来てるよっ! 学校行くから、食器は自分で片付けてね。じゃあ、行ってきます!」
眠い目を擦りながらリビングへ向かい、テーブルに置かれた味噌汁と納豆を口にする。
「……美味い」
風香は家庭の事情と言って部活を止め、学校以外は家事全般をしていた。
小学生だから遊びたいだろうと思い、家事はしなくてもいいと言ったのだが、風香は申し訳なさそうに首を横へと振るだけ。
私も役に立ちたいと、文句の一つも言わずに黙々と家事をこなす。
瞳の色は失ったままでも、風香は顔を上げて前を向いていた。
「立ち直れないのは、私だけか……弱いな……」
それに比べて俯いたままの私は、働く必要のない程の慰謝料と貯蓄により、自堕落な生活から抜け出せないでいた。
元気に笑顔を振り撒く風香を見て、自分自身が情けなくなる。
「ふぅ……」
綺麗に掃除されたリビングを見渡し、ため息を吐く私の視界に黄色の小瓶が飛び込んできた。
「これは、あの時の……」
膨大な時間がある私は、知り合いを頼って小瓶の中の薬を調べる事にした。
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