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そこに
「おや?どうしたんですか?」
山南が通りかかった。
えぐえぐ泣きながら「お饅頭が、皆の分ないって土方さんに言ったら怒られました」と柚が言うもんだから
「てめぇ!なんだその言い草は!」
土方が更に怒鳴る。
山南は苦笑いして「では、コレで足りない分と近藤さんと私の分も買って来てくださいね」と小銭をくれた。
「山南さん!!!」
ガバッと抱きついてきた柚を抱きとめながら「気をつけて行って来てくださいね」と優しく背中を撫でる。
山南の懐でうんうん頷いた柚は、パッと笑顔になって廊下を駆けて行った。
「……なんだあれ…」
「本当に可愛らしい」
「…………可愛くねぇ……」
「すみません。いいところを取っちゃったようで」
「…んな事ないです」
「ふふ、土方くんも一度彼女を抱き締めたら愛らしくなりますよ」
「ぶほっ!!!!!な、無いです!あんなクソ鼠!」
真っ赤になった土方を、山南は心の中で「この人のこういう所が好きだなぁ」と思いながら
「では、お饅頭がくるまでにお湯を沸かしておきますね」
と台所へ向かって行った。
……くそ、誰があんな女を…
山南さんに抱きつきやがって……
難しい男心が土方の胸を騒つかせた。
その一部始終を影で見ていた監察員。
「ぁー、また副長にちょっかい出して。あないな事したら、また好かれてまうやないか。…帰って来たらお仕置きやな」
クスっと笑ったあと、柚の護衛をする為に街へ向かった。
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