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「それに色々心配なこともあるしな」
「え?」
「奏に変な虫がつかないかどうか」
「あぁ…」
思わず声を漏らしてしまったのは、それについては大丈夫だって言い切れないなと思ったから。
俺の方は全く他の奴に目移りなんて有り得ないけど、周りが俺をどう思うかは未知数なわけで。
昔ならそれも笑い飛ばせたけど、何せ色々あったから、自信を持って言えないのが悲しい。
「何かあったら言えよ?ぶん殴ってやるから」
「暴力反対です」
「分かってる。でも、隠すなよ?あと、寂しかったから言え。すっ飛んでく」
「そんなの」
「無理でも何でも、会いに行く。頼むから、我慢はするな。俺の知らないとこで我慢される方がしんどい」
真剣な、それでいて労わる様な眼差しと、俺の頬をゆっくり撫でる手が優しくて涙が出そうになる。
「奏は何があっても迷惑とか心配かけたくないとか言って俺に隠そうとする。でも、隠れて泣くなよ?俺が見てないとこで泣くな。泣くなら俺の前だけにしろ」
「咲人さん…」
「奏を抱き締めてやる腕くらいは持ってる。だから奏は自分の夢だけ見てればいい。俺が行くから。奏は何も心配すんな」
「はい…」
いつの間にか頬を伝った涙がポタリとテーブルに落ちた。
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