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「雅、気付いてた…?」
「…まぁ」
やっぱり!
あぁ…恥ずかしい…。
穴があったら入りたい…どこまでも掘り進めて埋まってしまいたい。
「恥ずかしい…」
「気にすことないけどな」
「します」
「そうか?俺は嬉しいよ」
思わぬ言葉に疑いの視線を送ろうと思ったんだけど、意外な優しい眼差しとぶつかってそれは叶わなかった。
「乗り越えられた。前に進めた。奏はこれから前だけ向いていられる。だから嬉しいよ」
「雅…」
ぐっと込み上げる何かがあった。
雅は知ってたから。
俺の傷も、痛みも、諦めも、全部。
あんまり感情を表には出さないから分かりにくいけど、誰よりも俺の背中を押してくれた。
「僕も嬉しいよ?」
「真白さん」
「相談を受けた身としては、ね」
「え?なに?なに?何の相談?」
「内緒」
「え~…」
途中から入ってきたキリヤさんを軽くあしらった真白さんは、茶目っ気たっぷりの笑顔でウインクをした。
こんなアイドルばりのウインクなんか普通の人は出来ないけど、真白さんがやるとすごく様になる。
あの相談は真白さんの中だけで留まってるんだろうけど、何か今考えると恥ずかしいな。
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