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その子はすごく怯えているように見えた。そりゃ痴漢に遭っちゃったんだからそうなっちゃうよね。
また痴漢ヤローに対する怒りが沸き上がる。
でもその気持ちを抑えて、僕はその子に安心してもらおうと、なるべく優しい声で話しかけた。
「君も東高なの?」
制服に着けてる校章でそう判断した僕が聞くとこくんと頷く。
「そっか、一緒だね。僕は1年3組の倉田大介っていうんだ。よろしくね」
「…1年8組、森野綾瀬」
小さな声で答える。
「8組っていうと、北村っていなかったっけ?」
「…北村…いるかもしれないけど……わからない…」
かもしれないって、わからないって…もう二学期なのに、まだクラスメイトを覚えてないのかな。
「北村って野球部のヤツなんだけど、わかんない?」
「……」
どうやら本当にわからないらしい。
「そっか」
それきり僕たちの間に会話はなくなったけど、僕は森野君と一緒に登校した。
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