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翌日、朝の地下鉄に乗り込んだ時に手すりのところを見たら森野君がいた。
だから僕はその前に立って「おはよ」と挨拶をした。
森野君も一瞬だけ僕を見てから小さな声で「おはよ」って返してくれた。
僕は「ちょっとごめんね」と断ってから、森野君の横にある手すりに掴まった。必然的に森野君は座席と手すりの間に挟まったような形になる。つまりは僕の手の中に囲われるような体勢になった。
森野君はちょっとビックリしたような顔で、僕の手と座席の方とを、視線をいったりきたりさせてキョロキョロと見ていた。
いきなりだもん、ビックリするよね。
「驚かせてごめんね。でも僕は何もしないから、安心して森野君はそのままそこにいてね」
そう言って僕はニッコリと笑ってみせた。
森野君は小さくこくんと頷いた。
「ね、森野君は毎日この時間のここに乗るの?」
僕が聞くとまたこくんと頷く。
「そっか、じゃ僕もそうする。いいかな?」
ちょっと躊躇するような間があったけど、森野君はまたこくんと頷いた。
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