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それからは、僕たちは毎朝同じ地下鉄の同じ場所に乗り、一緒に登校するようになった。
とは言っても、森野君は人見知りさんなのかな、僕たちの間には殆ど会話らしい会話はなく、僕が一方的に喋ることが多かったけど。
それでも僕の問いかけに頷いたりはしてくれてるから、僕の話を聞いていないわけではないようだった。
「北村ってわかった?」
「………」
微かに首を横に振って答える森野君。
森野君の様子は、大きな犬に襲われて怯えきった柴犬の子犬が、また襲われるんじゃないかと辺りを窺っている、そんな感じかな。もう僕には森野君が柴犬の子犬にしか見えないよ。
だから僕は、森野君を怖がらせないように、なるべくニコニコと笑顔を浮かべながら差し障りのない話をすることを心掛けた。
「そっか。そういえば北村って野球部の割にはおとなしいし、存在感ないかもしれないね」
北村、ごめん。
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