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とにかく僕は、そいつの視界に森野君が入らないように、もちろん森野君の視界にもそいつが入らないように、まるで森野君の前に立ちはだかるようにして学校の最寄り駅まで行った。駅に着くまで森野君は僕の制服をキュッと掴んだままだった。
なんて可愛いんだろう。
森野君が一生懸命僕の制服を掴むその姿に、僕はちょっとキュンとした。
それからは森野君も少しずつお喋りをしてくれるようになった。
それにいつも僕の制服を掴んで立つようになった。なんかね、それが僕には、離れていかないでって言われてるみたいに感じられて、胸の奥が擽ったいようなそんな感じがした。
森野君は女の子と見まごうばかりのとても可愛い男の子で、今までも何度か痴漢に遭っちゃうことがあったみたいなんだ。
男に体を撫で回されるなんて、想像しただけで気持ち悪いよね。でも森野君は何も言えなくて黙って我慢してたらしい。
それを聞いた僕の中には、森野君を気の毒だと思う気持ちと、痴漢ヤローにムカつく気持ちとがグルグル渦巻いていた。
そして僕は、せめて朝の地下鉄では僕が森野君を守らなくちゃと、頼まれてもいないのに何故か使命感に燃えていた。
でもね、僕と一緒の時は守れるけど、森野君は僕より前の駅から地下鉄に乗ってくるから、僕の乗る駅までの間が心配なんだよね。
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