1.いきなり鬼

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さっきの鬼のような綾瀬はすっかりなりを潜めて、今はまるで柴犬の子犬を思わせる可愛らしさだ。 ん?なんで柴犬かって?ポメラニアンでもシーズーでもいいじゃないかって? そりゃ、僕が柴犬が好きだからだよ。ごめんね。 ところで綾瀬はというと、コーヒーが遅いことに怒って出て行ったけど、教室に着くかどうかって所で、綾瀬を追いかけなかった僕に不安が過ってここに戻ってきた、そんなところかな。 ちょっと不満を滲ませた表情を浮かべているけど、僕が用意した椅子にちょこんと座り、両手で包むようにコーヒーカップを持って、可愛らしく口をすぼめてフーって冷ましながら飲んでる。 ふふふ、殺人的な可愛らしさだな、僕の綾瀬は。 そんな綾瀬の様子を見ていると僕の顔はどうしても緩んでしまう。 綾瀬の前にペーパーナプキンに載せたロッククッキーを置いた。 このクッキーは昨日の夜、僕が作ったものだ。 型抜きクッキーみたいに生地を寝かせたり、型を抜いたりしなくていいから割と簡単に作れるんだよ。綾瀬が好きなくるみやアーモンドといったナッツ類を細かく砕いたものが入れてある。 「コーヒーと一緒にどうぞ」
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