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「ここは…」
周りが暗闇に支配される空間。
奈津は何度か来ていたが、雲雀は初めてだった。
「あのガキの空間か…。それとも…」
雲雀は冷静だった。そしてゆっくりと周りを見渡す。
「あそこか…」
暗闇の中にうっすらと人の形の輪郭が浮かび上がる。
そこへゆっくりと近づいていく雲雀。
どうやら男の子の体育座りをしているようだった。
「おい…」
男の子の前まで行き、話しかける雲雀。
男の子はゆっくりと顔を上げた。
「お前は森山浩太か?」
雲雀が尋ねるが男の子はジッと雲雀を見つめたまま動かない。
「それとも森山由紀か?」
続けて尋ねる。
すると先ほどと明らかに様子が変わった。
突然俯き、男の子は聞き取れるか聞き取れないかの声で呟く。
「…おか…あさ…」
そして顔を上げ、雲雀に向かいはっきりと言った。
「助けて!お願い!助けて!」
男の子の懇願を雲雀はただ黙って聞いていた。
その時だった。
「こう…ちゃ…ん…」
背後から声がした。
雲雀は背後から同時に凄まじい怨念を感じ取り、思わず振り向いた。
「こう…ちゃ…ん…。わた…しの…。こ…うちゃ…ん…」
そこにいたのは立ち尽くす一人の女性だった。
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