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土井の忠告を受け、ただその場に立ち尽くすしかない二人。
もどかしさが二人を襲う。
その時だった。
突然、悪寒が奈津を襲った。
(この感覚は…)
「カズさん!」
斎藤に異変を知らせようと、顔を見ると斎藤は既にある方向を向いていた。
奈津は斎藤が向いてる方向、すなわち部屋の方を見た。
「カズさん…。これって…」
「あぁ。浩太…くん?でいいのかな…?」
二人はじっと一点を見つめる。
すると部屋の奥からゆっくりとこちらに歩いてくる人影があった。
一歩。また一歩と…。
その姿は徐々に鮮明になる。
二人の予想は間違いなかった。
その正体は男の子。森山浩太だった。
「奈っちゃん!下がって!」
嫌な気配はしなかったが、反射的に斎藤は奈津を下がらせ距離を取らせる。
そうしている間にも一歩。また一歩と森本浩太は確実に歩を進めた。
「…た…け…」
森本浩太は何かを呟いているようだった。
「カズさん待って!あの子…。浩太くん。何か言ってる!」
奈津の言葉を聞き、二人は静かに浩太の声に耳を傾けた。
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