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暗闇が支配する空間の中、苦しみ悶えながらも殺気を込めた目で雲雀を睨みつける女性。
そんな女性にゆっくりと近づく雲雀。
その顔は無表情で、じっと女性を見ていた。
塩を手に握りしめながら…。
次の瞬間。
「待って!!」
声と同時に左腕を掴まれた雲雀。
掴んだのは奈津だった。
「雲雀さん待って!!」
必死に雲雀を止めようとする奈津。
「離せ。邪魔するな…」
そんな奈津の制止を振り切り女性に向かおうとする雲雀。
そこへ待ってと言わんばかりに右足を掴む者がいた。
浩太である。
「浩太くん…」
奈津は浩太の姿を見て少し安心した気持ちになった。
無理もない。あの時手を取ってやれなかった事。どれだけ後悔したことであろう。
「…ったく。何なんだお前ら!」
二人の制止を煩わしがる雲雀。
「待って雲雀さん!浩太くんが…。浩太くんが本当に助けて欲しいのは…!」
雲雀に向かい必死に訴えかける奈津。
玄関の入り口に立っている齊藤と奈津の前に現れた浩太。
二人に向かい話した言葉はこうだった…。
「助けて!お願い!ママを助けて!」
その言葉を聞いた瞬間、奈津の目の前が暗くなりこちら側に飛ばされてきたのだった。
そして浩太が話した言葉。
そう…。浩太がずっと発していた「助けて」の意味。
それは自分の母親を救ってほしいという、子供ながらに必死に訴えていた言葉だったのだ。
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